楽しくワイン研究会「ナポレオンの生涯とゆかりのワイン②」




英雄ナポレオンが愛したワイン


「ワインなくば兵士なし」これはナポレオンが残した言葉です。

ワインが兵士の士気を上げ、時には戦いの残酷さや戦友の死を忘れさせてくれたためにこの言葉を残したのかもしれません。


1、シャンベルタン(Chambertin)

ナポレオンが特に愛飲したのは、ブルゴーニュ地方の一大銘醸地であるコート・ド・ニュイ地区のジュヴレ・シャンベルタン村の特級畑で収穫された葡萄(ピノ・ノワール)を使って作られた「シャンベルタン」の赤ワインでした。


ナポレオンが愛したという歴史的な背景と併せて「ブルゴーニュの王」、「王のワイン」と呼ばれ、現在も世界中のワイン愛好家から愛されています。

当時、ボルドーのワインは「女性的」、ブルゴーニュのワインは「男性的」というイメージが定着していました。


ブルゴーニュワインは単一品種の葡萄でワインを作るのに対し、ボルドーワインは複数品種の葡萄を混ぜ合わせて作られる事、風味や色合いなどからそう思われていたのかもしれません。

特にブルゴーニュの中で最も男性的といわれている、いわゆる「男の中の男」と言えるワインがナポレオンが愛飲していた「シャンベルタン」でした。


トゥーロン攻囲戦でもマルグレイブ要塞と相対する兵士たちに人気の無い砲台の一つにナポレオンが一計を案じ「恐れを知らぬ男たち」という名前を付けて志願者が殺到したというエピソードがありましたが、当時の軍人にとって「男の中の男」という称号は憧れのものだったのだと考えられます。


そのためナポレオンがワーテルローの戦いに敗北してセントヘレナ島に幽閉された時、フランス産のワインは物流的にセントヘレナ島にはボルドー産のワインしか届かず、ナポレオンは「余がシャンベルタンを愛飲するのを承知しながら、ボルドー産のワインを飲ませるとは・・・」と激怒したと言われています。

ナポレオンがロシア遠征にまでシャンベルタンを運ばせ、懐で温めて飲んでいたというエピソードも残っているほどこのワインを溺愛したため、その名声は不動のものとなりました。

ナポレオンは戦いの前には必ずシャンベルタンを飲んでいました。


しかし、唯一ワーテルローの戦いの時のみ戦いの前にシャンベルタンを飲まなかったというエピソードがあります。

そのため、ワーテルローで敗北したのはシャンベルタンを飲まなかったからではないかとも言われています。

そういう意味でも「勝利のワイン」と呼べるでしょう。


◎シャンベルタン(Chambertin)

ナポレオンは、この特級畑「シャンベルタン」で収穫された葡萄を使用して作られたワインを実際に飲んでいました。

そういう歴史的背景やブランドがあるため、非常に高価なワインです。


◎シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ(Chambertin Clos de Beze)

特級畑「シャンベルタン」の隣の特級畑「クロ・ド・べーズ」で収穫された葡萄を使用して作られたワインです。

2、モエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)

ナポレオンはモエ・エ・シャンドンの3代目ジャン・レミー・モエとは将校時代からの友人だったことから、戦地へ赴く際にモエの邸宅に立ち寄り、シャンパーニュ(モエ・エ・シャンドン)の木箱を積んだと言われています。


唯一の例外は、ナポレオンがワーテルローでウェリントンと対峙するために急いで赴かなければならなかったときだったと言われています。

つまりナポレオンはワーテルローに赴く前にシャンパーニュ(モエ・エ・シャンドン)を積まず、ワーテルローの戦いの前にシャンベルタンを飲んでいなかったということですね。


ワーテルローで負けたことを考えると、ナポレオンにとってワインがどれほど大切かがわかります。

「シャンパーニュは私にとって必要だ。戦いに勝った時には飲む価値があり、戦いに負けた時には飲む必要がある」というのはナポレオンの言葉です。このような言葉が残されているところを見ると、戦いの後に飲むワインという印象を受けます。


戦いの前のシャンベルタン、戦いの後のシャンパーニュ(モエ・エ・シャンドン)ですね。

「アウステルリッツの戦い」や「イエナ・アウエルシュタットの戦い」、「ヴァグラムの戦い」などの後には勝利後の美酒として、「アスペルン・エスリンクの戦い」や「ライプツィヒの戦い」などの後には敗北を癒す気付け薬として飲んだのかもしれません。


「ワーテルローの戦い」の時にはシャンパーニュ(モエ・エ・シャンドン)は積んでいなかったということなので、敗北後の癒しさえ無かったというのは悲しいですね。

例えば、恋が成就(勝利)したことを祝って。はたまた、失恋(敗北)を癒すために「シャンパーニュ(モエ・エ・シャンドン)」を飲むというのもいいかもしれません。